image

星のたより星のたより

  • 寺報「妙乃見山」 投稿日:2025年12月01日

    12月1日発行 寺報「妙乃見山」

    今月の妙乃見山はこちらです。

    「知遇(ちぐ)し頂戴(ちょうだい)せん」

    石原崇広
    年の瀬が近づくと、新年に向けて落ち着いて年が越せるように「正月事始め」といって十二月十三日から正月準備をする風習があります。家の掃除をしたり、忙しく日々を過ごしていると、体調を崩しやすくなるのもこの時期です。体が弱った時程、何かのせいにしたくなる気持ちも一つや二つあるかもしれません。
    鎌倉時代の随筆家吉田兼好は、徒然草の中で、迷信や俗信に依存して自分を見失っていた人々に対し、こう記しています。
    「吉日に悪をなすに必ず凶なり。悪日に善を行ふに必ず吉なりと言へり。吉凶は人によりて日によらず」
    吉凶は私たちの普段の心がけによるもので、日々の良し悪しであらかじめきまってはいないという意味です。とても好きな言葉で、改めて一日の中で自分の心の声に耳を傾けていく時間をもとう、自身を置き去りにしない生き方を養っていこうと、思えてきます。
    今年を振り返って一番の思い出は、母と大阪万博に行けたことです。兄家族と一緒に行った母が大屋根リングを見て感動し、一生に一度だからと、私を誘ってくれました。前評判があまりよろしくなかった万博に半信半疑でしたが、大屋根リングを歩いた時、この時代に生まれて良かったという感謝と、素晴らしい瞬間に出会えて良かったという喜びが自然に私の心に湧いてきました。
    今この瞬間、かけがえのない出会いの中で私たちは生かされています。仏典では出会うということに「値う」という字をあてます。
    開経偈に「生生世世、値遇し頂戴せん」という言葉があります。幾度生まれ変わったとしても、このありがたい「法華経」に会い、信じ続けることを心からお誓いますという、奇跡的に法華経に出会えたことに対しての喜びをさします。 法華経を通して、私たちはどんなに困難な時も、私たちを救う為に見守っておられる仏さまに出会うことができます。この出会いこそ吉凶を超えた無上の喜びではないでしょうか。